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「ゼロから大切に育てる」

城山保育園インタビューロゴ

 

保育の歴史

 

福島 ここに保育園が出来たキッカケっていうのは・・・

 

園長 これはここに団地ができたから…

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福島 ああ、やっぱり団地に合わせて。

 

園長 そうですね。保育園が必要だとは行政は考えてなかったみたいですけど…必要だろうと。父親がこの土地を買ったわけです。最初来た時は何にもなかったですよ。家が。

 

福島 ああ、そうだったんですか…。

 

園長 私が来た時にはね。区画だけはみなさん個人個人の名前が貼ってあって。

 

福島 へぇ…。

 

園長 ああ…団地ができるんだなぁという造成が始まって…。

 

福島 それ何年くらい前の話ですか?

 

園長 32年位前かな?

 

福島 じゃあ昭和の中頃…。

 

園長 ええ。4年位かけてここ全部の土を。トラックで。毎日ですよ!毎日!

 

福島 山を削ったんですか!?

 

園長 そうです。城山というトンガリ山が。たぶん一番高い山だったんでしょうね。この辺りを見た感じでは。

 

福島 そんな高い山があったのを削っちゃったんですか!

 

園長 それを関越道の土にしたわけですよ。

 

福島 へぇー!

 

園長 だから毎日10t車がずーっと運んでましたよ。

 

福島 そうだったんですかぁ…。

 

園長 その造成があって、保育園を建ててもらって…。

 

福島 やっぱり団地とともにあったって感じなんですね。今どうなんですか子供は減ってる感じですか?

 

園長 いや、ここは見渡した感じだいたい持ち家でしょ?持ち家が半分の300、団地が半分の300、合わせて600所帯位あるんですよ。

 

福島 600所帯!

 

園長 で、ここの団地が30年経ったということは、生まれた子は30歳になったわけですよ。親になってるんで。で、当時ここに預けてた親御さんは40代で来てました。だから、70代~80代に掛けてみなさん高齢化してますね…。

 

福島 じゃあちょうど親になって、子供をまたここに預けて…。

 

園長 ええ。そういうのがポツポツと団地の中にはあります。

 

福島 そうなんですね。じゃあけっこう地域との密着性が強いんですかね?やっぱり。

 

園長 いや、ウチに来てる子は持ち家からは誰もいません。だから…団地の入居者ですね。

 

福島 持ち家からは居ないんですか?

 

園長 誰も居ません。高齢化だから。3世代住んでいる家は稀ですね。無いかもしれないな。

 

福島 やっぱり出て行っちゃうんですね。で、先生も世代交代して…。もう少し歴史について聞かせてもらえます?

 

園長 歴史はね、いっぱいあるんですよ…。

 

福島 長い…(笑)

 

園長 もっと昔からの歴史がね笑 60年位前にほんとは作りたかったんですって。戦後すぐですね、大きな保育園を。

 

福島 はい。

 

園長 まだ一つも保育園がなかった時代ですね。あ、一つあったか!小祝神社(おぼりじんじゃ)っていうのがあるんですよ。古い。そこに一箇所ありました。私が出たところなんですけど。

 

福島 まだ保育園というものが…。

 

園長 そうなかったんです。

 

福島 働いてる間に子どもを預けるという概念が無いですもんね。

 

園長 そうですね(笑)だから一番古い保育園でも60年前。

 

福島 やっぱりでもお寺とかでしょ?

 

園長 そうです。お寺関係の農家の子どもたちを預かってた。

 

福島 農家の!そうかぁ…。農家…。

 

園長 そうですよ!(笑)だって昔は農家しか居なかったんです!8割農家ですからね。サラリーマンなんて居なかったんですから!

 

福島 もうみんな、兼業農家とか専業農家…?

 

園長 いやぁほぼ専業ですよ。兼業に切り替わったのは…40年代ですねぇ。

 

福島 じゃあ戦後ですか。

 

園長 そうですよ!それまでは働き手がみんな戦争に行って、おじいちゃん、おばあちゃんと、お母ちゃん“三ちゃん”でやってた。教科書出てたでしょ?三ちゃん農業って言って(笑)

 

福島 三ちゃん農業!?(笑)

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園長 知らない?

 

福島 たぶん僕なんかは教科書からなくなってる頃ですよ(笑)

 

園長 お父さんが居ないから、おじい“ちゃん”おばあ“ちゃん”お母“ちゃん”で三“ちゃん”で支えてる…知らないんですか!?(笑)

 

福島 中学に上がる頃にはバブル終わってたから…

 

園長 教科書が変わってるかぁ…(笑)それで農家を支えてたんですよ。家計を。で、戻ってきたお父さんが居ればまた柱になりますけどね。

 

福島 ああ…。そういう時代からの歴史が…すごいですね。そういう状況と関わりながら役割を担ってきたってことですよね。

 

園長 保育園はね…関わってきましたよね。

 

シンボルは白い屋根

 

福島 そういうような歴史を踏まえてきて…で、奥様と最初の頃に話した時に、まず木を使いたいというか…木に囲まれた空間がいいという…。

 

園長 そうですね、そういうものがいいという感覚があったんですね。

 

福島 で、ぼくらが手がけてた途中の他の保育園にたまたま来て…。

 

園長 そうです。それで、面白い建物を作ってるなと(笑)

 

福島 変なのやってるなってね(笑)で、連絡をもらって、完成間際のものを見てもらって…それで、園舎を新しく作るにあたって一番大事にしたかった事って何だったんでしょうかね?

 

園長 既存のものと同じような建物を作りたくないし…木で出来れば…。その考えがまずあって、それで通り一遍のあまりおもしろくない建物が出来上がっても…ちょっとなぁ…というのがあって…。

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福島 はい。

 

園長 ちょっと変わった…というかね。他の保育園の仕上がりを見て、こんな感じに一部屋作ってもらったらいいだろうなぁー!と、まぁそんな気軽な気持ちで声をかけて。やっていただきました(笑)

 

福島 いや、ありがたい話です。建築屋さんの都合でけっこうものが作られていっちゃうじゃないですか。で、そのメリットとかも勿論あると思うんですよ。合理的に作っちゃうんで。工期の面とか…予算の面とか…デザイン性の面とかも…それはそういう意味ではいいとは思うんですけど、僕なんかはもう少し違うところに価値を置いてもいいんじゃないかなと思ったんですよ。

 

園長 えぇ。

 

福島 まぁ、そんなに凝らなくててもいいのにみたいな(笑)そういうことをやり過ぎちゃって。自分たちの首を絞めてるくらいなところもあるんですけど。まだなの?まだなの?みたいな(苦笑)でもそれでも長く、何十年と残っていくことを思えば、そこの何日間かはいずれは…大きな問題ではなくなるんじゃないかなと…。

 

園長 そうですね。歴史の長さから比べたら小さなものになってしまうんでね。

 

福島 その時は急いでやらなきゃってのはもちろんあるんですけど…。でも、そうやって少し価値の軸を変えるだけで全く違う環境を整えられるんじゃないかなと思ってて…。

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園長 そうだと思います(笑)

 

福島 それで奥様ともよく話しをさせて頂いて、共感してもらえる部分もあったりして、僕なんかも共感できる部分もあって…。それからこう、設計の段階に入って…僕はちょっとシンボリックなものを作りたかったんです。

 

園長 ああ…なるほどねぇ。

 

福島 これからの城山保育園はこういう方向を向いてるぞ!という。まぁ全部じゃなくてもいいんですけど。こんなこと考えてるよという…。

 

園長 場所も正面だから…。

 

福島 そうなんですよ!

 

園長 外から見るとね、何ができたんだろう?ってみんな気に留めてくれますもんね。

 

福島 すごい考えたんですよ。シンボルに成り得ることと、保育園としての考え方とかそういうことが相まってくれればいいなと思って…古い農家みたいなのをイメージしたんです。

 

園長 ああ…。ありがとうございます。

 

福島 いや、そんな(笑)それなんでさっきの農家の子どもたちを預かって…ていう歴史の話とつながるなと思って。そういうイメージで作ってみたんですけど。その中で生活が営まれてる…保育が行われてるっていうのが雰囲気としてはいいなぁと思って。それで屋根の形をこう…ちょっと…笑 実際に茅葺きにするのは難しかったんで(笑)

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園長 茅葺きね(笑)

 

福島 そう、だからちょっと屋根は茅葺屋根を模して…そういうことでやってみたんです。

 

園長 今はね…とっても私は気に入っています。

 

福島 ありがとうございます(笑)

 

園長 あの…(笑)最初見た時は、どんな屋根になるのかなぁとね、想像つかなかったんですよ(笑)でも、いいです!ここに…ピッタリです!

 

福島 合いましたよね!

 

園長 うんピッタリですね。よかったです。白い屋根もよかったですねぇ。

 

福島 そんなに違和感なかったですよね。いや、心配されてたから(笑)

 

園長 いやぁ、ホントに(笑)どんな屋根になるのか…ドキドキでしたよ?

 

二人 ははははは(笑)

 

福島 そうでしょ?(笑)最初は上に芝生、生やしたら?とか僕が言ってたから、大丈夫かなぁ…って(笑)

 

園長 ほんとそう思ってましたね(笑)ええ…。

 

木に囲まれてゼロから

 

福島 いやでもよかった。それで、実際に出来上がって…子どもが良く寝付くとかって聞いたんですけど…前よりも。

 

園長 ああ、落ち着くんじゃないですか?

 

福島 はい、落ち着いてよく寝るんですよーって。言われましたよ。

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園長 だからゆくゆくは向こうの部屋も、木に変えたいと思ってるんですよ。

 

福島 いいですねぇ。その際は声をかけていただけると…(笑)

 

園長 ぜひ、やりたいんで。お願いします(笑)

 

福島 あと、やさしくなったって聞きますよ!木を貼ると。

 

園長 へーえ!違うんですかねぇ?木の持ってる何かが…。冷や~ってしたものがありますもんね。コンクリートは。材質からの熱の伝わり方で違うんですかねぇ。

 

福島 たぶんそうかもしれないですね!心のバランスとかに作用するのかも。

 

園長 色が無いですもんね。コンクリートは。

 

福島 あとは触った時に返ってくるやさしさっていうか…。

 

園長 全然違いますよね!

 

福島 匂いとかもね。跳ね返りとか。

 

園長 木っていうのは不思議ですよね。

 

福島 やっぱ付き合いが長いんでしょうね。人間との。

 

園長 (笑)そうなんですよ。鉄、コンクリートは最近のことですからね。やっぱりその、微妙な違いはわかりますよ。保育士さんは。

 

福島 そうでしょ?

 

園長 わかるんですよ。あれぇ?っていう。

 

福島 様子がいつもと違うなぁっていう。

 

園長 敏感な人は(笑)

 

二人 はははは(笑)

 

福島 鈍感だった人が敏感になっていったら面白いですよね。

 

園長 それはいい効果ですね(笑)

 

福島 嫌味しか言わない人が優しいこと言うようになるみたいな(笑)

 

園長 なりますかねぇ(笑)

 

福島 どうでしょう?なるかもしれない(笑)でも、今回はじめて意識したかもしれないな。これまではなんとなくいいよ!って感じだけだったんですけど。具体的に子どもがぐっすり寝るようになったとか言ってもらえて…これはいい話を聞いたなと思って(笑)

 

園長 そうですか(笑)それでね0歳児がね、去年から多くなってきたんですよ。これまでは居なかったんですけど。

 

福島 ええ。

 

園長 最大でも二人!なんでウチ来ないのかなーって…(苦笑)

 

福島 へえ…。

 

園長 そういう時代が続いてたんですけど、これが出来てから3人になって…4人になって…いまは8人居ますよ!

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福島 すごいですね!

 

園長 ええ…だから…ねえ?(笑)

 

福島 手狭になっちゃった(笑)

 

園長 これ以上入れないですから(笑)限度が9人かな。

 

福島 最初に先生からお話いただいた時はせいぜい6人だろうって(笑)言ってましたよね?

 

園長 そうなんですよ(笑)来ちゃったんですよねぇ…。

 

福島 でも、うれしいですねぇ…!

 

園長 この建物がね、やっぱりいい印象があるんですよ。入ってきて一番にこれ見ると。で、ここを0歳児の部屋にして、0歳児を木の環境の中で保育するというのがね夢だったんですけどねぇ。なかなか今まで機会がなくて…子どもが来てないのに作っても…というのがあって。でも、たまたま今回いろいろなタイミングが合って出来て…。

 

福島 はい。ありがとうございます。

 

園長 ゼロを大事していくっていうね。出発を大事にしていくというのが体現できて…

 

福島 非常にわかりいいですよね。あんまり説明がいらないというか。

 

園長 そうそう(笑)

 

福島 こういうとこで育てますからって言えば、ああそういう気持ちでやってくれてるんだなというのが…なんとなく伝わりますもんね。

 

園長 そうですねぇ…。あと、このデッキと建物が一緒なのがまたいいですよね。

 

福島 これ、先生が欲しいって言ったんでしたよね?

 

園長 そうそう(笑)うちが昔、農家の家だったから縁側があったんですよ。縁側で日向ぼっこだったりとか、その思い出がどうも頭から離れないんですよ。離れないんです。

 

福島 ああ、まさに…

 

園長 南向いたところに縁側があって…っていう。

 

福島 これ、非常によかったですよね!

 

園長 あると無いとじゃエライ違いですよ!去年まではね、夏のお祭りにベンチをレンタルしてたんですよ。それもなくなったんです(笑)ここに腰掛けるようになったから。

 

福島 その光景撮りたいですね…!大人たちが腰掛けてるのを。

 

園長 いやぁ、ほんとによかったです。

 

福島 餅まきもしましたしね…。あれもよかったですね。

 

園長 はい…。ありがとうございます。

 

福島 ありがとうございます。こちらこそ…。

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